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これは朗報ですね!凄い!
アルツハイマー病ではアミロイドβという蛋白が蓄積するということは随分前からわかっていましたが、アミロイドβをターゲットにした治療は、臨床試験でことごとく結果を出せずに終わってきた歴史があります。
バイオジェンとエーザイは以前、アミロイドβタンパクに対する抗体製剤、「アデュカヌマブ」の臨床試験を行い、主要評価項目は達成しなかったものの、サブ解析の結果をもってアデュカヌマブはFDAに承認されました。しかし、費用対効果の面で大きな論争となり、日本や欧州では承認されず、世界的には使用されることはほとんどありませんでした。
同じくアミロイドβを標的とした抗体製剤である「レカネマブ」の第3相臨床試験が行われ、本日その結果が発表されました。この臨床試験(Clarity AD試験)では、早期のアルツハイマー型認知症の患者1795人を対象に、レカネマブ投与群、プラセボ群などに割り付け、「18ヵ月後の認知症に関する症状スコアの平均変化量」を主要評価項目としています。結果、レカネマブ投与群では27%の認知症症状の悪化抑制を示し、統計学的に有意な結果であったと報告されています。エーザイはこの臨床試験の結果をもとに、2022年度中の米国におけるフル承認申請、日本・欧州における販売承認申請を目指すとしています。
現時点での解釈にはいくつか注意点があります。1つは現時点の発表では詳細なデータは公開されていない点です。最終的な判断は今後の論文発表を待つ必要があります。
もう1つは、この薬を承認するかどうかという議論です。妥当な臨床試験を行い有効性を示した治療薬は、その後承認されて広く使われるようになるのが一般的な流れですが、認知症の薬剤に関しては一歩立ち止まって考える必要があります。認知症の方は日本国内でも約600万人いるとされており、一般的に抗体製剤は1人あたり数百万円~数千万円と超高額です。認知症を患っている方や介護をしている家族の方にとっては、治療薬は希望の光であることは間違いありませんが、社会全体でみれば、早期の認知症を「遅らせる」(改善させるわけではない)薬剤をこれだけ多くの方に投与するべきかどうか。アデュカヌマブと同様、コストパフォーマンスの面で今後大きな論争となりそうです。
早ければ来年の1月にも結果が公表される予定で、いざ承認となれば、アルツハイマー病治療の景色を大きく変える可能性があります。
ただし、結果は手放しに喜べるものではないというのも事実だと思います。主要な結果は、認知症を改善するものではなく、あくまで進行を27%遅くしたというものでしたが、「引き算」の結果で見ると、18点スケールで0.45点の差を生んだという結果です。
これは良く見積もっても小さな変化と言わざるを得ず、「統計学的に有意な差」が必ずしも「臨床的に有意な差」(すなわち患者さんにとって意義のある差)ではないという、基本に立ち返った議論を生むと思います。
また、こちらもアデュカヌマブよりもよい結果に見えるとは言え、薬を投与された人の12.5%に脳浮腫、17%に脳内の出血の副作用が見られています。これに加えて、もはや語るまでもないコストという副作用もあります。
リスク•ベネフィットの天秤は、アデュカヌマブと比較すれば明らかにベネフィットに傾いたものの、まだ疑問符の残る結果でもあります。未来に可能性を残したという意義が最も大きいのかもしれません。
詳細については、論文の公表を待つ必要があります。
バイオジェン•プレスリリース
https://investors.biogen.com/news-releases/news-release-details/lecanemab-confirmatory-phase-3-clarity-ad-study-met-primary
ホームランだけを期待され続ける研究職へのプレッシャーを想像すると恐ろしくなります。
その意義は、週刊朝日の記事にかいたように、この治験が1795名の被験者をプラセボ群と10ミリグラム隔週投与群の1対1にわけ、18カ月後の認知の状態を主要評価項目にさだめるという、いわばよい結果がでても、悪い結果がでても、言い訳のできない設計になっていたことです。
よい結果がでれば、確実に承認までいき、悪い結果がでれば、アミロイドβを標的とするアミロイド・カスケード・セオリーは根本から考え直さなければならないことになります。
その結果は、20パーセントの差があれば、臨床的効果がみられるというところ、27パーセント、レカネマブ群のほうが、進行をくい止めたということが、統計学的に有意に証明されたということです。
なぜ、エーザイの治験がうまくいって、これまでの治験がすべて失敗してきたのか、その理由については、週刊朝日の記事を参照にしてください。
https://dot.asahi.com/wa/2022092700061.html
一方で、日本の公的保険の枠組みで使用できるようにすべきかというと、コスパの観点で論争を引き起こしそうです。
公的保険制度のあり方を議論する良いきっかけになればいいですね。
認知症の中でもアルツハイマーは一番良く知られていますし、当然患者数も多いです。
自分の老後を見据えて、色々プラニングしていた時偶然知ったのですが、現状日本の高齢者のうち約15%が認知症、今のままいくと20%まで増加する予測もあるようです。
認知症の約半分はアルツハイマーとのことですから、今後は発病を遅らせる、進行を遅らせることが出来る薬が出来ると、日本経済のためにも、高齢者のQOLの為にも嬉しいことだと思います。
ご参考
https://newspicks.com/news/7374101