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話題 2021.09.17

金沢21世紀美術館からはじまる「XR×映画」の未来 THINK & SENSE × MIRRORLIAR FILMS “XR”パートナーシップ締結

株式会社ティーアンドエスと、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS PROJECT(ミラーライアーフィルムズ プロジェクト)」が2021年7月4日パートナーシップ締結を合意し、金沢21世紀美術館で行われた『MIRRORLIAR FILMS Season1』ジャパンプレミア上映会で2021年9月4日に正式発表されました。これにより、クリエイティブ集団「THINK AND SENSE」の持つXRやデジタルアートなどのテクノロジーを駆使した、より良い映画体験の実現が目指されます。

今回はイベント内容をはじめ、会場での挑戦的な展示、終盤に行われたワークショップの様子などを、レポート形式で紹介します。

MIRRORLIAR FILMS とは

9月17日の全国公開に先駆けて金沢21世紀美術館 シアター21にて行われた、オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season1』のジャパンプレミア上映会。

その後開催されたトークショーでは、本プロジェクトに関わる監督やプロデューサーが登壇。「MIRRORLIAR FILMS PROJECT」のコンセプトや、作品のこだわりなどが語られました。ここではトークショーのなかから、「MIRRORLIAR FILMS」と「THINK AND SENSE」の関わり、そしてパートナーシップ締結の経緯についての話を抜粋してお届けします。

【登壇者】
・株式会社and pictures代表取締役・MIRRORLIAR FILMS プロデューサー・伊藤主税氏
・MIRRORLIAR FILMS 監督・武正晴氏
・MIRRORLIAR FILMS プロデューサー・山田孝之氏
・株式会社ティーアンドエス代表取締役社長・THINK AND SENSEプロデューサー・稲葉繁樹氏
・THINK AND SENSE部部長・松山周平氏

冒頭の挨拶では、伊藤主税氏が、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS PROJECT」のコンセプトについて説明しました。

「MIRRORLIAR FILMS PROJECT」とはクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクトで、年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦します。イベントに登壇した山田孝之氏をはじめ、安藤政信さんや池田エライザさん、紀里谷和明さんといった有名映画関係者も多数参加していることも特徴です。

参加監督:Azumi Hasegawa/阿部進之介/安藤政信/井樫彩/池田エライザ/枝優花/GAZEBO/紀里谷和明/Ken Shinozaki/駒谷揚/齊藤工/志尊淳/柴咲コウ/柴田有麿/武正晴/西遼太郎/野﨑浩貴/花田陵/林隆行/針生悠伺/福永壮志/藤井道人/藤原知之/真壁勇樹/松居大悟/三島有紀子/水川あさみ/三吉彩花/村岡哲至/村上リ子/ムロツヨシ/山下敦弘/山田佳奈/山田孝之/李闘士男/渡辺大知 (五十音順)

『MIRRORLIAR FILMS Season1』予告編

伊藤氏によれば、36本の短編映画を1年にわたって上映していく本プロジェクトにおいて、そのうちの12作品はまだ実績のない一般クリエイターが制作した映画なのだとか。さらに今回、金沢でイベントを開くにあたって、まったく映画を撮ったことのない人を集めて映画の作り方や脚本の書き方を学ぶワークショップを開催。そのように「だれでも映画を撮れる」ことを可能にしたテクノロジーの進歩についてふれつつ、次のように話しました。

「映像とテクノロジーは今後どんどん融合されるべきですし、そういったものがみなさんにも使いやすくなる時代になると思っています。映像を軸にした多角的な体験と、テクノロジーの民主化ということなどを含め『MIRRORLIAR FILMS』を軸にいろいろ展開していこうと思っていまして、その皮切りができたことを非常に嬉しく思っています」

このテクノロジーの分野で「MIRRORLIAR FILMS」とパートナーシップを締結したのが、株式会社ティーアンドエスの社内クリエイティブチーム「THINK AND SENSE」です。

THINK AND SENCE とは

「THINK AND SENSE」は、テクノロジーを活かしたリアルイベントの演出などを手掛けているクリエイティブ集団で、これまで「Pokémon GO AR展望台」や「SoftBank 5G 日本代表国際親善試合」など、ARを利用したさまざまな表現を発表しています。

そのプロデューサーを務める稲葉繁樹氏によれば、締結のきっかけは伊藤氏からの「映画の楽しみ方をXRなどテクノロジーを活用して、もっとアップデートしていきたい。全国の地域で映画作りにおけるワークショップを開催し、誰しもが映画を作れる社会にしていきたい」という相談だったのだとか。その場で「一緒にやろう」と即答し、プロジェクトへの参加と今回のパートナーシップ締結に至ったそうです。

その流れでTHINK AND SENSE部部長・松山周平氏から紹介されたのが、「TouchDesigner」というツール。プロジェクションマッピングや、映画のバーチャルプロダクションシステム、そのほかにも音楽ライブやデザインの分野でも活用されているソフトウェアです。

TouchDesigner自体は約20年前からハイエンド分野で使われていましたが、近年のコンピューターの高性能化によって、現在は一般のノートパソコンでも使えるように。松山氏たちはその解説書をつくったり、ワークショップを開いたりして、技術の普及に努めているとの話でした。

そのようなTHINK AND SENSEの「だれでもデジタルアートをつくれる時代を目指そう」という取り組みは、「MIRRORLIAR FILMS」の「だれでも映画を撮れる時代の幕が開く」というコンセプトとも近く、強いシンパシーを感じたとのこと。松山氏は次のように続けて、このパートナーシップに意欲を示していました。

「今回提供させていただいているものは、『MIRRORLIAR FILMS』さんとのプロジェクトの始まりだと思っておりまして。今後は我々もご一緒させていただいて、新しい体験をどんどんつくっていきたいなと思っています」

「映画を楽しむ方法って、まず当たり前に『劇場に来て、映像を見る』という楽しみがありますが、それ以外にも楽しみ方があってもいいと思うんですよね。たとえば、パンフレットやグッズみたいなものもある。さらに、テクノロジーを活用して、映画をスクリーンで見る形ではない、空間全体を使って体験できるようなものにしてみたらどうだろう、とか。好きな作品をさまざまな違った形でより楽しめる体験を、作品と、その作品の外側でも広げていくようなことを、(『MIRRORLIAR FILMS』と)ぜひご一緒できたらなと考えています」

また「MIRRORLIAR FILMS PROJECT」のプロデューサーであり、『MIRRORLIAR FILMS Season1』の一篇「さくら、」に出演した山田孝之氏も「僕たちはこの短編やオムニバスによって『映画をもっと身近に感じてほしい』という思いでやっていて、それをさらに続けるための準備もしています。今はiPhoneでも撮れる時代ですし、1分でも何かストーリーを考えて、撮るきっかけになったらいいなと思います。これからも『MIRRORLIAR FILMS』をよろしくお願いします」とコメントしていました。

金沢21世紀美術館で展開されたデジタルアート

会場となった金沢21世紀美術館では、同日デジタルアートとXR体験の企画も設置されていました。過去にも多種多彩な展示を発表してきた「THINK AND SENSE」による、通常の映画館とは違った体験型のインスタレーションとなっていました。

そのひとつが、イベント会場となっているシアター21のロビーに展開された、先端技術を活用したデジタルアートで体験できるブース「Interactive mirror」。カメラを通して人間を認識するAIに対して、顔を隠すなどして「だます」と、周囲の空間が変化するインスタレーションです。

AIは人間以外の物体も認識し、現地で配布されたパンフレットをかざすと、空間全体に作品のポスタービジュアルのアニメーションが流れます。このブースは、「役者は鏡をもだます」という「MIRRORLIAR」のコンセプトを体現しているそうです。

松山氏によれば、「この技術を活用することによって、人の手でやらなければならなかった映像の処理をAIに任せられる」とのこと。たとえば「この人だけ消したい」と指定すると、AIが対象を認識して自動で削除してくれる、といった使い方ができると解説していました。

もうひとつは、ARアプリケーション「MirrorLiar Shot」。これは来場者向けに用意された、ARを活用した記念撮影ができるアプリです。静止画だけでなく動画も撮ることができ、シアター21の場内を背景にして撮影。撮ったデータはQRコードを介して持って帰ることができました。

会場ではほかにも、「INTERACT MOVIE WORKSHOP-だれでも映画が撮れる時代-」と題した映像制作ワークショップを開催。and picturesの榊原有佑監督を講師に迎え、企画制作、脚本制作、演技、撮影、編集に至るまで、映画製作の一連の流れを体験できました。

ワークショップのなかでは、THINK AND SENSE部部長・松山周平氏による「TouchDesigner」の解説も行われました。TouchDesignerの概要に始まり、このソフトを使ってどのようなことができるかを説明。専門外の人にもわかりやすく、かつ過去のプロジェクトを具体例として示しながら説明されており、高度なテクノロジーを活用した映像制作のハードルを下げるような講座となっていました。

また武正晴監督もワークショップに参加。AIを使った技術によって「おもしろい発想がどんどん可能になっていく」と感心しつつも、一方では、これまでやってきた作業をAIに任せてしまうことで「考えなくなってくる」場合もあると指摘。「テクノロジーが実現した人間の発想の、さらにその上を行く作り手たちの発想力と努力が求められるようになるのではないか」と話していました。

さらに自身の昔の撮影エピソードも披露。30年ほど前に「ドアを何度も開けても、まったく目的地に着けない」というシーンを撮る際に、実際にドアを持って海や地下鉄へ行って撮影していたそう。それが今は、合成技術を使えばその場ですべて撮れてしまうので、「あの苦労はなんだったんだ、って思いました」と笑いながら当時を振り返っていました。

そのような技術を使っておもしろい作品を生み出す若者の姿を見て、「やっぱり映画は若者のものである」と改めて感じたらしい武監督。「若い人がおもしろいことを考えてバカなことをやってくれる」ことに期待していると話しつつ、最後に次のコメントを残しました。

「できないことってないですよね。人間が発想することに。それがおもしろいから、映画っていうのはおもしろいですよね」

XR技術で映画の未来は変わるのか?

ヴェネツィア国際映画祭カンヌ国際映画祭といった名だたる映画祭でもVRやARの作品が取り上げられるなど、近年ますます注目を集めている映画とXR技術のコラボレーション。日本でも「Beyond the Frame Festival」や「4K・VR徳島映画祭2021」などのVRに特化した映画祭が開かれており、その注目度は国内外を問わず高まりつつあります。

また、ARを使った映画のプロモーションも近年は盛況で、さまざまな作品が宣伝に活用されています。特にスマートフォンのARアプリは端末さえあれば誰でも体験でき、しかもARという技術自体が映画との親和性が高いため、活用事例は枚挙に暇がありません。

そのような「映像」と「テクノロジー」の関係性については、今回のトークショーでも言及されていました。「リュミエール兄弟が映写機をつくったときから、技術と映画はすごく関係が強いものだと思います」と話していた松山氏の「THINK AND SENSE」が、今後どのような表現を生み出していくのか。THINK AND SENSE × MIRRORLIAR FILMSによるテクノロジーと技術のコラボレーションに期待が高まります。

新宿バルト9で「MIRRORLIAR FILMS」特別上映決定!

9⽉17⽇(金)〜25⽇(土)の9⽇間、新宿バルト9での特別限定上映が決定しました。初⽇17⽇には9⼈の監督と山田孝之プロデューサーが舞台挨拶に登壇。18⽇以降も連⽇⽇替わりゲストによるアフタートークを⾏います。

「MIRRORLIAR FILMS Season1」初⽇舞台挨拶概要

⽇程:9⽉17⽇(⾦)
時間:18:00の回上映終了後
場所:新宿バルト9
登壇者:安藤政信、枝優花、武正晴、⻄遼太郎、花⽥陵、針⽣悠伺、藤原知之、三吉彩花、⼭下敦弘、⼭⽥孝之(敬称略・五⼗⾳順)
※感染対策の都合上、舞台挨拶へのゲスト登壇は前半と後半で⼈数を分けて実施します。
※登壇者は予告なく変更になる場合があります。

17⽇のチケットのみ、9⽉11⽇(⼟)正午12:00よりローソンチケットにて販売開始(〜13⽇23:59)です。
https://l-tike.com/mirrorliarfilms

18⽇以降は劇場オンラインチケット予約KINEZOにて販売(各実施日2日前のAM0:00より販売開始)。18⽇以降の実施時間や登壇ゲストにつきましては、新宿バルト9および作品公式SNSを確認ください。

公式サイト:https://films.mirrorliar.com/
Facebook:https://www.facebook.com/MIRRORLIAR.FILMS
Twitter:https://twitter.com/mirrorliarfilms
Instagram:https://www.instagram.com/mirrorliarfilms/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCv3FY9nEOApyGBW0BryeLEQ

THINK AND SENSE:https://thinkandsense.com/

執筆:けいろー


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