11時間超勤務で心筋梗塞増 会社員、50歳以上は注意
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このデータの解釈には注意が必要です。本研究では、心筋梗塞、脳梗塞、心血管疾患総数、心臓突然死といった複数のアウトカムに関して同時に解析しており、心筋梗塞でのみ統計学的有意差を認め、今回の記事に繋がっています。
この問題は「多重検定」と呼ばれます。そもそも偶然差がついた可能性を十分低くするために、統計学的手法を用いて解析をするわけですが、検定の数を増やせば増やすほど、その偶然の確率は高まります。よって、多数の解析を同時に行った本研究において、「統計学的有意差」の信頼性は大きく落ちることになります。
また、当初の解析では有意差がつかずに、開始から3年のデータを取り除いて再度解析をしていること、心筋梗塞の確認が問診だけに留まるケースが含まれること、十分な交絡因子の調整が行われていないこと、勤務時間は全て本人の自己申告に依存することなど、限界が数多く認められるため、それを差し引いて考える必要があります。
最後に、本記事のように、心筋梗塞で「のみ」統計学的有意差が認められ、その他のあらゆるアウトカムで有意差を認めなかったことが平等に報告されないことは、報告バイアス(差がついたものだけが報告されることによる偏り)を生む、というメディア側の問題も指摘しておきます。
記事だけ読んでいるとこのような背景が見えにくいと思いますので、補足させていただきました。これですね。日本循環器学会誌なんで、後で読んでみるかな。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30842356/
アブストラクトだけ見ると
40-59歳の男性を20年追跡してみると、ある程度生活習慣病などで補正しても、長時間労働は心筋梗塞のリスクを1.6倍に、特に会社員・50代という方でリスクが増大したとのこと。
ちなみに脳卒中リスクは増大してません。
女性は入っていないので、どのような影響が出るかはわかりません。
コホート研究と統計解析の限界もあるので、そういったもんかな?という程度に受け止めるのが良いかもしれません。
また、これがいわゆる過労死と言えるかどうかは別で、退職後に発症された方もいるのではないかと思います。
でもこれ、勤務医(笑)本論とは関係ありませんが、この記事には統計の標本数も数値の誤差率、そして1番重要なこの差が統計的に優位であるかが示されていません。一般の人にそこまでの知識がないという前提で要旨だけかいつまんでいるのかもしれませんが、少なくとも1.6倍という数字には意味がなく、両者に優位な差異があるかどうか、というのが正しいプレゼンテーションではないでしょうか。因みにアメリカのニュース良く見ると統計数字がを出す時、右下に小さく標準偏差が表示されていて統計の素養のある人の判断の助けになっています。
この辺の統計に関する意識というよりレベルの問題が厚労省の不正統計問題の真因だと思う。(悪気があるのでなく無知なだけ。全量調査とサンプル調査、標本の入れ替えの持つ意味など理解していないのではないかと疑っています)