海外を飛び回る私がパスポートを持っていない理由

面白そうこの連載

質問いっぱいあったので、朝鮮籍（北朝鮮籍ではないですよ）を維持している理由について。あまり分かりやすい喩えでもないかもしれませんが、こんなことです。

たとえば、目の色が赤いと不利益を受ける社会があるとします。安全かつ廉価の手術をすればあなたの赤い目の色が変えられるとします。それで変える人もいれば、変えない人もいると思います。

生まれた時に悪いことをしていないんだから、間違っているのは自分ではなく社会のはずで、だったら変えないでおこうと私は思うわけです。

そうするのが絶対に正しいとか言っているわけではなく、私はそうしたいのです。というのも、誰もが生まれたときの境遇を否定しないでいい世の中が好きだからです。


なお、これはさらに突き詰めると若干複雑なことで、「だったら生まれたときの歯並びが悪いのを矯正しないのか」みたいな話にもなります。なので、より精密に議論をすると、次の二つの問いを立てるべきなんだと思います。
(1) 自分が生まれた時に持っていた特性であるXは、自分の人格と不可分であるのか
(2) Xを持っていると不利益になるとして、その特性を捨たくないと思うか

私にとっての国籍は(1)と(2)の両方にYesなんですね。(1)にYesなのは、国籍がコミュニティおよび私個人の歴史的経緯と絡まってしまっているから。(2)もYesなのは先に説明した通りです。

私も元々は朝鮮籍でしたが、5年前韓国籍に変えました。理由はパスポートを持てるからです。朝鮮籍から韓国籍に変えるのは結構簡単なのです。
慎さんも書いてますが朝鮮籍というのは記号にすぎません。そもそも韓国と北朝鮮になる前から日本に来ていた人がほとんどです。私の祖父の本籍も「韓国側」の土地でした。
私は少しの後ろめたさを感じながら納得感を持って韓国籍に変えました。あの時感じた後ろめたさは北朝鮮を否定するのではなく、そうでもしないと生きにくい世の中に屈してしまった自分が居たからでしょうか。
一方慎さんは私の1000倍海外を飛び回っているにも関わらずまだ朝鮮籍を維持している。これは本当にすごいことです。
このグローバルな社会になったとはいえ、ヘイトスピーチなど我々に対するヘイトはあります。何か北朝鮮が問題を起こせば、何の罪もない学生達が通う朝鮮学校に嫌がらせの電話が殺到します。
(今はわかりませんが、私の時代はそうでした。)
慎さんのような方が増えて少しでもヘイトより尊敬を集められるようになったらいいなと思います。もちろん私も頑張ります。
>追記
たくさんのいいねありがとうございます。
みなさんが朝鮮籍のことについて聞きにくいとおっしゃっておりますが、
私は聞いて欲しいです。「地元どこ？」ぐらいの軽さで。
韓国名を名乗っている人なら私みたいな在日の方が多いはずです。
別に好いてくれとはいいませんが、我々のような人間がいることを少しでも知って欲しいからです。

なぜ朝鮮籍を維持するのか。朝鮮籍の人から答えをほとんど聞いたことがないので貴重な内容です。いくら世界がボーダレス化している、国籍は関係ないという主張もあるほどですが、やはり、国籍が痛烈に意識される場面は外国への入国（慎さんの場合は「外国」の概念も違うかも知れません）のシーン。